カウンセリングをしていると次にあげるようなクライエントさんにお会いすることが少なくありません。
いくつか例をあげると・・・。
〇職場で特になにかあったわけでもないのにいつも全く自信が持てず、だんだん出社が苦痛になっていかれなくなってしまった。
〇大学を卒業して一流と言われる会社に就職したものの、仕事は合わないし、上司はパワハラ的だし、だんだうつ状態になって出社できなくなってしまった。
〇成績もよかったし、親が医師だし、深く考えることなく合格して医師になれたが、手術の後遺症で亡くなった患者さんがあってから怖くなり出勤できなくなった。
〇本当は美術関係の仕事につきたかったが、親や周囲から食べていくのが難しいと言われ、堅い今の仕事に就いたが、やりがいはまるでなく、ただこなしている感じでだんだん不眠になってしまった。
〇昔から両親にダメ出しされることばかりで、何も言わせないように死ぬほど努力して「人に非難されないよう正しい生き方」をしようと頑張った。
しかし職場の人間関係がうまくいかず、長期休職と復職を繰り返したうえ、結局うまくいかず退職することになった。
上のようなケースは「適応障害」や「うつ病」場合により「性格障害」などとも診断され、
期間はいろいろですが休職中の場合もあり、何らかの薬物治療もしている方たちです。
そして、共通しているのは主としてご両親から
「良かれと思って」と言語的、非言語的なダメ出しメッセージや支配的ともいえるアドバイスを日常的に受けてこられたことです。
ドラマなどでは社会的に何らかのはみ出し行為をした子供に両親が
「お前のためを思って言ってきたのに・・なんだこのざまは!」と怒ったり、
「良かれと思ってアドバイスしてきただけでしょうに」などと恨み事を言っている場面がでてきますね。
そして当の息子あるいは娘は怒りや涙とともに
「何言ってんだ!あんたたち自身のためだったってわかってんだぞ!」
みたいに怒鳴ったりする場面があります。
上にあげた①―⑤のケースでは実はこのドラマでのやりとりのような応酬が目に見えにくい形で起こっていたり、
またそういう気持ちが自分にあることを本人がまだ気づいていない場合もあります。
では、このような「良かれと思って・・・」の背景にはどんなことが隠されているのかみてみましょう。
この「良かれと思って」は日常親子関係だけではなく教師と生徒、友人関係、上司、先輩と部下、後輩の間でやりとりされるコミュニケーションです。
これで関係性が本当にうまくいけば問題ありません。
では、うまくいかない場合は何が問題なんでしょう?
それは・・・・・多くの場合こういうことが起こっているからではないでしょうか?
1.相手をよくわかっているからと相手の気持ちの確認をしていない。
2.自分のフィルターを「相手に投影」してしまっている。
1,2は特に親しい関係、親子関係で一番起こりやすいといえるかもしれませんし、
誤解のまま進むと子供のほうは心身に何らかの問題を起こしがちです。
深く言えばインナーチャイルドの望みに反することが起こっているのですからある意味当然ともいえますね。
「息子(娘)のことは自分が一番よくわかってるんだから」と思う親は少なくないし、
①―⑤にあげたケースの方々のご両親もカウンセリングが進んでくるとそのような傾向が多々あるとわかってきたりします。
特に親子関係の場合は、親自身の不安や達成されなかった願望、不全感などが子供に投影されることが起こりやすいといえます。
子供もその投影に気づかず成長して社会に出てしまうとある時期に何らかの人生のつまずきが起こりがちです。
でも、そこからが「自分自身の人生を見つけていくスタート」になりますから
「セルフ再生プロジェクト」になると言い換えてもいいくらいかなとは思いますけどね。
特に親子など先に挙げた関係性のなかでは、成人した子供に対しての本当の「思いやり」というのは、
「相手に選択の余地がある」ということを前提としていることです。
先ほども書いたように両親(上司、先輩なども)自身に不安や不全感が大きくある場合は病的な投影が行われ、
その結果投影された相手(子供、生徒、部下、後輩など)を知らず知らず傷つけてしまいます。
もしあなた自身が「良かれと思って」のアドバイスなどを受けた場合、しかもそれが受け入れがたく回避したい場合はどうしたらよいでしょうか?
回避するには・・・
「良かれと思って言ってくれたんですね」といったん受け止める言葉が必要かもしれません。
その後、「自分はそれを必要としていないので、「・・・」のようなサポートだとありがたいです」と返してみます。
そのときにその「良かれと思ってと言った人」が自分の不安や支配欲などのエゴからではないものだったら、
あなたの気持ちを理解してくれるでしょう。
逆に「せっかく良かれと思ってアドバイスしてやったのに~」といった感じで怒ったり不快を示すようなら、
その人の隠れた意図は「エゴから出たもの」だと判別もつきます(*^^)v
ただし、成人の場合もまだ子供の場合も、例外的な重大な問題に関しては親や保護者が介入する必要もあるでしょう。
その場合でも相手とのコミュニケーションを尊重することは必須です。
意識の「二極化」がさらに進んできている現在では、昔はそこまで問題として認識されなかった「自分のエゴを相手に投影してしまう」場合の「良かれと思って」という行為のマイナス面が明確にあらわれてきていると言えるのではと感じています。
さて、あなた自身は「良かれと思って・・」と言われることが多いでしょうか?
あるいは自分がそういう風に言うことが多いでしょうか?
そんなことは言われたことも言ったこともない、でしょうか?
それではまたお会いしましょう(^_^)/~